慧眼日記

慧眼のラジャ。リアルな日常。

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カネマサという男

古い友人がいる。

彼の名はカネマサ。僕が名付け、僕しかその名を呼ばない。

いわゆる魂の名前。

まず、彼との出会いから。
初めての接触は高校の時。たしか2年生くらいだったと思う。

「おい、お前ケンカしないか?」

これはカネマサが初対面で僕に向かって吐いたセリフだ。安いヤンキー漫画みたいでいかにも青春的な出会いだったが、実際はケンカをせずに終わる。

リアルだとそんなもんだろう。

特に僕の事が気にくわなかったとか、そんなんじゃない。後から本人に聞いた話だが、「なんとなく」だったらしい。

このエピソードから、彼がクレイジーであることが分かると思う。

まあ、当時流行っていたヤンキー漫画に触発されたんだろうと勝手に思っている。

そういうやつだ。

そして、その後は共通の友人を介してカネマサと麻雀に明け暮れる事になる。彼の家はいわゆる溜まり場。理由もなく人が出入りしていた。

そこには、麻雀セットがあった。

毎日人が集まれば当然首まで麻雀に浸かってしまう。

ズブズブだった。

毎日毎日、学校をサボって麻雀を打った。
しかも、彼の家庭事情は母子家庭の放任主義ということもあり、大人の邪魔が入らなかったのが幸いだった。

ちなみに、もし僕がカネマサの親の立場だったら全力で追い出しているw

しかし、彼の母親も麻雀に参加していた。

ダメでしょ(笑)

で。

そんなディープな付き合いは、社会人になっても続く。
ちなみに、カネマサという名前が生まれたのは社会人になってから。

なぜ?カネマサなのか?

漢字で書くと「金政」。

そう、社会人になり仲間内の誰よりも羽振りがよかった。

カネを唸らせる男ーカネマサー

元々、彼の家は貧乏だ。夕食が「ごはんとキムチ」や「ごはんと漬物」など質素極まりなかった。

後々、聞いた話だが彼の母親は病気で働けず、生活保護かなんかで一家を食わせていたらしい。

この部分だけ聞けば、すこし侘しい話だが実際は若者に混じってバチバチに麻雀を興じ、ヘビースモーカーでアル中のカネマサ母を知っているから侘しくはない。

そんなカネマサが社会人になった18の時、彼の母親が他界した。

糖尿病による心筋梗塞だった。

そして、多額な保険金を残したらしい。
あの人が保険に入ってるなんて想像がつかなかった。そんなカネがあったのかと。

どのくらい彼の財布に入ったのか謎だが、保険金を受け取ったその瞬間から、カネマサとなった。

カネをジャブジャブ使う。

マサがいるところにカネがある。

18才の若僧は富豪となった。服・車・家電・食事、衣食住の水準が上がり仲間達には毎回何かを奢った。

カネマサと遊べばすべて奢り。

むしろ、欲しいモノはなんでも買ってくれる。

そんな噂は小さな町では一瞬で広がる。

元々、溜まり場だった彼の家にはさらに多くの若者が集まった。勝手に出前の寿司を頼んだり、彼の家の固定電話からエロチャンネルに電話したり、そんなイタズラ?が流行した。

それでも、カネマサはニヤニヤしながら

「お前ら、やめろよーw」

と、なんもなく嬉しそうだった。

ーそして、そんな富豪生活が3ヶ月くらいたった頃、彼は破産した。

僕はその瞬間に出くわした。

彼がパチンコ代を出してくれるというので、一緒に打ちに行った時だった。

カネマサは銀行のATMの前でフリーズした。

「カネがない。」

青ざめた顔で、振り向いたその絶望的な顔は今でも忘れなれない。

なんでも、残高が200万くらいあったのに全て引き落とされていたらしい。

一体なにが起こったのか?

それは、彼の姉の仕業だった。姉も金遣いが荒くなり、切羽詰まって口座から彼に無断で残高をすべて引き落としたとの事だった。

その日から間もなく、彼は地元から旅立った。

出稼ぎだ。

そんなカネマサを送り出すため、仲間達は空港まで見送りにいった。
皆、彼には多大な恩がある。当然の事だ。それぞれが思い思いのモノを餞別として渡した。

ちなみに、僕は当時バイトしていたモスバーガーの制服の帽子を渡した。
けっこう使い倒したクタクタなやつ。しかし、キチンとラッピングして渡したからヴィンテージの何かだと勘違いしてくれたことだろう。

カネマサが出発ゲートをくぐるのを皆で見送った。何度も何度も振り替える彼の姿は、まるで映画のワンシーンのようだった。
たぶん、僕が死ぬときにはその場面が走馬灯として流れることだろう。

ーそして、10年ほど経った今。

カネマサは家を購入し、奥さん・子ども3人と幸せに暮らしている。

本当によかった。

しかし、家のローンが相当キツいらしく最近はカネの無心をしてくる。

さすが、カネマサだ。


つづく。

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