慧眼日記【gamble days】

慧眼のラジャ。リアルな日常。

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【9日目】ギャンブラーとイカフライ

100ローでイカフライを買った。
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こいつを食うとある男の話を思い出す。

その男はギャンブラーだった。

どれくらい昔か今となってはわからない。季節もその時着ていた服も靴も覚えていない。ただ、あの時打った博打と雨が降っていた事は覚えている。

あと、イカフライ。

男はその日が給料日だった。その月は残業も多かったから給料袋はいつもよりパンパン。家賃だとかそういうのをさっ引いても手元に大30本以上は余裕で残った。

何事もなければ、その月はリッチに過ごせる。

男はその給料袋を抱えパチンコ屋へ向かった。まだ支払いもなにもしていない手付かずの弾を抱えて。

男はギャンブラーだった。打つ弾があるうちに勝負をする。そして、よりリッチでエッチな日々を過ごしたいと願った。

しかし、所詮はパチンコ。民衆の娯楽。せいぜい大2、3本とれりゃそれでいい。だからこそまずは腕ならし。ここで軽くぬいてボートへ全ツが男の計略。

だが、ここで運命は狂い始める。

さらっと大3本を失う。なによりその展開が悪い。持ってる弾が多すぎて、男には知略がなかった。あったのは余裕だけ。好きな台を乱れ打った結果だった。

パチ屋を出ると辺りは暗く、雨が降っていた。

競艇のナイターが始まる。

そして、男は失った大3本の重みを痛感していた。2日ほどの日当が自身の愚によりわずか数時間で溶けたことへの現実が重くのしかかる。

とりかえさなきゃ。

その日の負けはその日のうちに。今日という1日を笑顔で終わらせるために、取らないといけない。そもそもギャンブルとは捲りこそが醍醐味。負けからの大逆転こそ、脳内麻薬をブンブンに溢れ出させる。

男はコンビニのATMから大10本をテレボートした。

狙いは2連単。ガチガチへの全ツ一点張り。

倍率は1.5~1.8くらいだったか。しかし大10本だ。少なく見積もっても大5本は戻ってくる。

もはや刺せるビジョンしかなかった。普段豆券しか買っていなかった男にとって、それは大勝負であった。しかし不思議なことに気持ちは落ち着きレースが始まる前から勝利の愉悦に浸っていた。

結果はきっちり。

たしか大6本くらい浮いたと思う。簡単すぎ。簡単すぎる。たったワンクリックで稼ぎ出したゼニ。だからこそ隙があった。別場でもアチアチなレースがあるじゃないかと気づく。

もっと、もっとだ。

大16本の全ツを決めた。

しかしどういう買い目だったかは覚えていない。それよりもドハズレした事だけが印象に残っている。もはや頭で買ってる挺のスタートがドカ遅れで1M手前でライブ中継をシャットアウトした。

ここの時点でもはや大10以上溶かしている。

その日の負けはその日のうちに。なによりまだ弾はあるじゃないのさ。いや、それは弾じゃない。使ってはいけない生きていく為のゼニ。お金。

男は守りに入っていた。

そして新たな賭場へ。

インは大10本。プレイヤーへの1発張り。落とす。

大10本追加。プレイヤーへの1発張り。落とす。

大20本追加。レートをあげる。

ここだった。もはやこれを溶かせば男は死ぬ。なにせここ落とせば大40の負け確。先のギャンブルと合わせれば50オーバー。

つまりはその月が詰む・・・!

思考はチンチンに焼けていた。眼に写る光景は灰色で胃がヒリヒリに痛くなり頭痛が襲う。苛まれる後悔。なぜこうなった?なぜこうなった?

なんで・・・?

最後はド鉄のバンカーへ大20本1発張りだった。

ディーラーの動きがスローに見えた。

そして、無音になる。

カードはめくられた。

きっちりプレイヤーは初手2枚でナチュラル9。これ以上も以下もない最強の数字。

男はそれを見た瞬間、椅子にもたれた。頭の中が真っ白になりボンヤリと自身がBETしたバンカーのカードを見守る。

8。

強い数字だ。だが負け。きっちり。

大40を溶かす。というか50以上。

しばらく、男はその場を動けずただただ進行していくゲームを眺めた。微笑みながらカードをめくるディーラーのネーチャンを心の中でディスりながら・・・。

外界は雨が降っていた。闇の中でシトシトと落ちる雨に打たれながら男は帰宅した。

そして、ペラペラの給料袋をチェックする。

残りはあと5000円と小銭がちょこっと。

お、オワターーーー!!

男は1人でガチで叫んだ。

まだもろもろの支払いもしていない、クレジットカードもじきに止まる、携帯とまる、食費は?タバコは?5000で残り1ヶ月?それなんて地獄なの?

眠れなかった。

先の生活への不安と勝負に負けた悔しさが頭の中をクルクルまわった。そして、払いものをどうしようと考えるとドキドキした。心臓の鼓動を聞きながら、布団上で何度も寝返りをした。

しかし、気付けば朝だった。

寝ぼけながら昨日の出来事が夢だったらいいのになとか男は真っ先に考えたが、うすうすの給料袋を見て現実だと確信した。

男は考えた。どうすればいいのかと。

そして、出した結論がサラ金からつまむという至ってシンプルな方法だった。

さっそく2社から大10本ずつ借り、とりあえずもろもろの支払いを済ませた。男は安堵した。これで、なんとかる。借金はできたけども、生きていける。と。

その時、男の腹が空腹のうめきを上げた。

安心と共に現れた食欲。

しかし、贅沢はできない。多少のゼニはあるものの日々利子がかさんでいくカラス金。ここは欲を抑えて生活していくのがベター。

すると、100円ローソンを見つけた。そこは大概のものが100円+税というガジリには嬉しいお店だ。

ペットボトルのブラックコーヒー、おにぎりを1つ、その2点を持ってレジに行くと様々な揚げ物、いわゆるレジ系の商品に目がとまった。

まあ、これくらいはいいよな。

男はイカフライを注文した。なぜイカフライだったのかはわからない。別に好きでもないし特別な思い入れもこの時はまだない。それが運命だったということだ。

コーヒーとおにぎりはレジ袋に入れ、ホカホカに温めたイカフライは専用の小さい紙袋に入れられていた。それらを持ち、外にでて車に乗り込もうとした瞬間だった。

あ!!

イカフライが紙袋からこぼれ落ちた。

昨日からの雨で濡れたアスファルトの上に。

男は反射的にそれを広い上げたが、すでに水気を含み砂の粒が点々とくっついていた。

それらを手で振り払いイカフライを紙袋に戻した。

そして、車内でおにぎりといっしょにそのイカフライを食らう。ビチョっとしたそのイカフライはちょっとだけジャリジャリしていた。

男は情けなさでいっぱいになった。

どんだけツイてないんだよ。と。まさに踏んだり蹴ったりだと男は思った。ましてや、それを食わされる状況に追い込まれているのだと痛感した。

たったの数万。それをとりにいっただけなのに。

なんで、落ちたイカフライなんか食ってるんだよ。

男はブラックコーヒーで口を濯いだ。

そして、こう思った。

次はうまくやる。

イカフライを食うとあの時のことを思い出す。
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以上。

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